本人の認証は欧米はサインが一般的ですが、日本では印鑑を使います。
自分が自分である証ともいえる印鑑。徹底的にこだわる人も少なくありませんが、世の中に一つだけの手彫り印鑑を作っているお店は高松市内にも多くはありません。
今回は、田町商店街で確かな技術でこだわりの手彫り印を販売している福本文照堂さんに話を聞きにいきました。
インタビュワー:
素朴な質問ですが、ご主人がお持ちの「一級彫刻士」というのは、手彫りで判子を作る資格なのですか?
福本文照堂 福本剛始さん(以下、剛始さん): そうです。いまでは、手彫りをやっているのも高松でうちを含めて数件になってしまいました。
インタビュワー: 今回、僕の印鑑を手彫りで作っていただいたのですが、字の大きさがひとつひとつ違う、でも全体としてのバランスが絶妙にとれていて、ほんとうに感動しました。やっぱりスゴイですね。とは言っても、やはりこのご時世は機械彫りに押されているんではないでしょうか。
真治さん:(剛始さんの息子さん、以下真治さん)
そうですね。安さで選ばれるお客様はどうしても機械彫りになってしまいます。しかしその一方で、うちが手彫りで長年やっていると知っていて「やっぱり手彫りで」というお客様も結構おられるんです。
インタビュワー: これを見ていると、印鑑は単なる文字の羅列ではなく全体としての「絵」がすごく大事で、手彫りでしか表現できないものだということがよく伝わってきます。
真治さん: フォントを使って機械彫りしていると、どうしてもワンパターンですから、飽きてきます。父(剛始さん)なんかはそのできあがりを見て「ここがいかん」と、機械彫りにダメ出ししていますよ(笑)。
インタビュワー: ところで由紀子さんはご主人から言うと孫のお嫁さんにあたるのですね。この見習いを始めてどれくらいですか?
由紀子さん:(お孫さんのお嫁さん、以下由紀子さん) ここで手伝いはじめて1年になりました。奥が深くて難しいですが、ホントおもしろいですよ。まず最初におじいちゃん(剛始さん)にこれから彫る部分を筆書きしてもらうのですが、はじめのうちはただ筆書きしてあるところをそのまま彫っていたんです。でもそれではダメ。篆書(てんしょ)の場合は、基本線は踏まえつつ左右の余白が完全に同じになるように自分で考えてライン取りをしなくてはならないと教えられました。
インタビュワー: しかし若い方が見習いに入られて、頼もしいことですね。
真治さん: 正直いまどきの女性では続くかな~と心配してましたけど(笑)、意外に面白さを見出してくれたようで、ほっとしているところです。よい伝統を守りながら、みんなで力を合わせてお店をやっていけたらよいなと思っています。

編集企画:スタジオとみっぺ 平成21年5月15日 高松市田町福本文照堂店舗前
▼福本文照堂さんの場所はこちら 香川県高松市田町3-12 福本文照堂 ご主人:福本剛始さん 電話 087-831-1001 営業時間 9:00~18:00
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