高度成長、バブル景気そしてその後の長い景気低迷を経て、日本の政治、経済そして社会全体が混迷を極めています。 豊かな時代だからこそ、失ったものも少なくない。そんな思いにかられることも少なくありません。 こんな時こそ、愛情をもって人や仕事に向かおうと語るのは、高松市内で子供服販売一筋50年以上SUZUYAの入谷寿満男さんです。 さっそく話を聞いてみましょう。
インタビュワー: 最近子供服のご商売はいかがですか?
SUZUYA入谷寿満男さん(以下、入谷さん): この商売に限らず、今のように、モノ余りのご時世、商売も難しい時代になってきたね。こんな状況では、私の宝物である次の世代、自分の子供たちにこの仕事を手伝ってもらうことも心苦しいね。
インタビュワー: たしかに今は何かと大変な時期ですよね。しかしお子様のことを「宝物」とさりげなくおっしゃるところが、素敵です。
入谷さん:
自分の子供はもちろんですが、私にとっては従業員も「宝物」。毎月の給与は全員に私が手渡すのですが、「景気が回復した暁には必ず上乗せするから、今は辛抱してな」と、頭を下げる月末が続いていますよ・・・(苦笑)。
インタビュワー: とても誠実に接されているんですね。
入谷さん: 私たちのお客さまは、夢と未来に満ちた子供たちです。子供はどんな親にとっても宝物、どんな親でも子供のことは愛しています。そんな商売をする私たちがこの仕事、そして従業員に愛情がなければとてもとても続けられませんよ。
インタビュワー: なるほど、勉強になります・・・
入谷さん: こんな時代だからこそ、下積み時代に商売の先輩だった叔父から言われた、「取引先との間に信頼の虹を架けろ」との言葉も思い出します。どちらが強いか弱いかという力で成り立った関係は、その力がなくなれば自然と崩れてしまいます。ただしお互いの信頼関係を元になりたつ関係は、簡単には構築できないですけれど、その信頼関係ができたときの美しさには目を見張るものがある。まるで雨上がりにかかる虹のようにね。
インタビュワー: なにか僕たち若い世代や世の中全体に向けてのメッセージに聞こえてきました。
入谷さん: なんでも今はデジタル時代、効率化が優先される時代ですが、逆に昔に比べて業務上のミスや行き違いなどが増えたことを心配しています。仕入れたものが狭い店舗に予定より早く届いてしまったり、全然宛名の違う請求書が届いたりね(笑)。こんな些細なことも、愛や信頼関係が薄くなってしまったのと、決して無関係ではないと思うんです。そういう意味で、一昔前を振り返りまだまだ良い時代だったなどと思うこともある。豊かになってしまったからなのかなー。なんか今は買い物をしても、美味しいものを食べても、どこかなにか「無感動」なんですよ。私が子供ころ、もう60年も昔になりますが、田舎で数台しかない「トラック」の後ろを全速力で追いかけて、ガソリンの匂いを噛みしめて興奮したのを今でも覚えています。この仕事を通じて、お客様である子供たちに生涯にわたって忘れることのない感動を与えることができるのか?いつも自問しながら、純粋な気持ちで取り組んでいきたいですね。
インタビュワー: いやぁ、入谷さんの愛情に満ちたお話に、とても感動いたしました。また続きを聞かせてください。ありがとうございました。

編集企画:スタジオとみっぺ 平成21年3月6日高松市南新町本店にて
▼SUZUYAの場所はこちら 香川県高松市南新町13-2
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