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法人成りの実務

●1.法人成りの税務会計の実務

法人設立日前日の個人決算書の貸借対照表項目の拾い出しします。

【1】売掛金、受取手形等
売掛金・受取手形等の債権は時価で引き継ぎます。その一部を引き継いでもいいですし、まったく引き継がなくてもよいです。
ただし回収ができないと見込まれる不良債権を法人に引き継がないようにしましょう。引き継いだ後に回収不能となり、貸倒損失を計上した場合、法人の代表者となった社長個人(旧個人事業主)の役員賞与として所得税が課されてしまう場合があります。

【2】棚卸資産
資産の引継価格は時価となります。税務的には売買価格の70%以上が目安となります。個人の資産を法人に引き渡す場合は事業所得の収入となります。なお、不良在庫は含めないようにしてください。不良在庫は個人側で引き継ぎ前に除却処分するのがよいでしょう。理由は【1】と同じです。ちなみに棚卸資産の引き継ぎは資産の譲渡となりますので課税事業者の方は消費税が課税になります。

【3】車両、工具器具備品(償却後)
資産の引継価格は時価となります。
法人に引き継ぐ場合、個人に譲渡所得の申告の必要になる場合があります。
引き継いだ方の法人は、中古資産の耐用年数で減価償却を行います。(減価償却のスピードが個人より早い場合があります。)上記【2】同様、消費税の課税事業者である場合は消費税がかかります。

【資産譲渡の要約】

商品(棚卸資産) 事業所得として課税  
土地、建物、借地権 譲渡所得として課税(分離課税) (措法31、32)
内装設備、車両、備品 譲渡所得として課税(総合課税) (所法33)
営業権(のれん) 譲渡所得として課税(総合課税) (所法基通33-1)
売掛金、貸付金 他 債権金額と同額で引き継ぐ限り課税関係はなし  

【4】買掛金

【5】負債
負債は原則引継ぎませんが、一定の理由がある場合は譲り渡しもできます。例えば、引き継ぐ資産(車両)とひも付きである借入金がある場合など・・・その場合は、金融機関に個人から法人への名義変更手続きを行ってください。

【6】消費税
個人が当期(廃業した年度)に消費税の課税事業者である場合は上記の資産の譲渡金額を含めて申告します。

 

●2.その他の実務

【1】個人の預金通帳について
・法人の売上・仕入が個人通帳に入出金されている場合は、法人に振替を行います。個人勘定(預かり金、短期貸付金)などの勘定科目を使います。

【2】名義変更
車両、保険、事務所・駐車場賃貸契約、リース、電気、水道、ガスなど

【3】契約書
・営業譲渡契約書(債権・債務の引継契約書)の作成、
・取締役会(株主総会)の議事録(営業譲渡承認分)の作成
・雇入通知書・・・従業員を引き継ぐ場合

【4】不動産を法人に賃貸する場合
・個人が法人に不動産を賃貸する場合は、賃貸借契約書を作成します。
・この契約により、個人は不動産収入が発生し、確定申告する必要がでてきますが、市場の取引価格、法人の収支予想などを参考に決定します。
・不動産が建物の場合は家賃に対して消費税がかかります。
・個人の土地に法人が建物を立てる場合は、借地権の認定課税がある場合がありますので、注意が必要です。
・青色申告承認申請書を提出し要件を満たせば個人側の不動産収入にも青色申告控除(10万円)があります。

【5】その他
・法人成りの年は、個人側で引当金の繰入は認められていません。

 

●3.土地建物について補足

以上のように、法人に個人事業の資産と負債を引継ぐ場合には、適正な対価を受け取って行われていれば問題は生じませんが、土地や建物などの高額資産を引継がせる場合には、大きな所得税を支払うことになる可能性があります。また不動産取得税(県税)の課税も忘れてはいけません。この点から通常では土地や建物を法人に引き継がせず個人と法人で賃貸契約することが多いようです。
さらには、割増償却をした建物をを帳簿価額で引継いだ場合や、二つ以上の固定資産を譲渡した場合などに低額譲渡の規定を適用されてしまう恐れがありますので注意してください。

 

●4.法人成りと消費税

基準期間(2年前)の課税売上高が1,000万円超である場合は消費税の納税義務者となります。

なお、個人事業の場合、開業年度とその翌年度は基準期間がないことから免税事業者となります。法人の場合もこの開業時の免税期間があり、法人化することにより免税期間を利用して2年間消費税の免税事業者となることができます。

ポイント
個人事業でスタートし、課税事業者となる直前で資本金1,000万円未満の法人を設立すれば、約4年間(もしくはそれ以上)免税のメリットを受けることも可能です。

注意点
1)2期間免税となりますので、法人の1期目の期間を1年とすれば、丸2年免税メリットを享受できます。
2)1期目で1,000万円超となる増資をしたら、2期目は課税事業者になります。 
3)すでに課税事業者となっている個人事業者は、法人成りにより事業資産を譲渡すると、その譲渡にも消費税負担が生じるので、慎重に検討する必要があります。個人所有の不動産(建物)賃貸した場合も同様です。
 

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